会長挨拶

2016年1月より光化学協会の会長を拝命いたしました。どうぞよろしくお願い申し上げます。

光を吸収して進行する化学反応は、私たちの視覚や植物の光合成のような生物系、太陽電池等のエネルギー変換系、また、光触媒や半導体微細加工に用いられるフォトレジストなどの数多くの光機能材料において重要な役割を果たすとともに、物質の光応答は分光分析装置や顕微計測装置にも広く用いられています。これらの光反応や光応答を対象とする光化学分野において、日本の研究者は、基礎的な励起分子素過程の解明、光による合成手法開拓、新規光機能分子・材料の創成、またレーザーなどを利用した光物質プロセッシング法や新規光計測手法の開発などの広い領域で、質、量ともに優れた研究を展開し国際的にも先導的な役割を果たしてきました。

1976年に発足した光化学協会は、光化学を進める研究者の討論や交流の促進、光化学を研究する学生や若手研究者の育成等を通して、これらの研究水準の向上に貢献すると共に、一般の方々への光化学の啓蒙活動、アジア・オセアニア地域、またヨーロッパやアメリカ大陸(北南米)の光化学関連学協会との連携等々の幅広い活動を積極的に展開してきました。学際分野を背景とする光化学協会には、多様な専門分野を持つ研究者が多数参加し、学問としての中心的なトピックスも時々刻々と変化していますが、現在のトピックスやコアとなっている課題のみに集中するだけではなく、次代のコアとなる課題を提案できる環境を用意してきました。事実、我が国では光化学に関係する種々の重要な研究プロジェクトも連続的に推進されています。これらの中には、学問領域としては萌芽的な段階から目的を明確に定めた応用的段階にあるものも含まれており、多様な課題を醸成してきたことを示すものと考えています。

上記のように協会の事業は多岐にわたりますが、特に国際的な協調と競争は、広くグローバル化が叫ばれる今後の日本にとって重要な視点と考えます。発展の著しいアジア各地域を背景に、昨今では “競争”のみが注目を集めますが、我が国にはオリジナリティやプライオリティを有する分野も多数存在します。次代を担う日本の若手研究者や学生が、これらをきちんと認識しつつ、信頼関係に基づく国際競争、国際協調体制を中長期的に継続できるように、協会としても討論会と協力して積極的に海外研究者と切磋琢磨していける環境を整備してきました。今後もこの取り組みを継続、発展させていきたいと思っています。

2016年は協会設立40周年の節目にあたり、記念事業の準備も進んでいます。40年と言えば、ちょうど大学院生から定年までの期間に対応します。その意味では、第1世代から第2世代へ、時代の変化にも対応しながら、しかし基本的な良い伝統は保持しつつ、光化学協会の持つ優れた多様性、国際的優位性、今後の発展の可能性を最大限に活用するために、多くの背景を持つ会員の皆様のご意見をもとに理事会の皆様とも良く議論し、微力ではありますが協会の発展に鋭意努力したいと思っています。

皆様には、ご指導、ご鞭撻の程、何卒、宜しくお願いいたします。

2016-2017光化学協会会長
宮坂 博
(大阪大学 大学院基礎工学研究科)